卒業生へのメッセージ 学園長
この春に学園長に就任致しました藤本朝巳です。私は1982~1994年(12年間)、平和学園高校(現在のアレセイア湘南)に英語教師として勤めていました。その後、しばらく大学院での学びの時を経て、同じキリスト教主義のフェリス女学院大学文学部英文科に20年間奉職し、この度、古巣の平和学園に戻ってきました。26年ぶりですが学園の建学の精神は変わっていません。先達の教えを引継ぎ、経験豊かな教職員、新しい時代に生きる若い教職員と共に、学園の教育理念を尊重して励んでいきたいと願っています。
就任早々に教職員に語ったことは、聖書に基づき、『互いに仕え合う』ということでした。「新約聖書」エフェソの信徒への手紙、5章21節に「キリストに対する畏れをもって、互いに仕え合いなさい」と記されています。この場合の「仕える」とは、一方が主で、他方はそれに従うという意味ではありません。共に神の前に立ち、同じ方向を向いて一緒に歩んでいく、という意味です。キリスト教精神の下の教育機関では、神の恵みのもと、神への畏れをもって互いに仕え合うことが求められているのです。
さて、「緊急事態宣言」後、生命と健康を守るため、子ども園の一部を除いて、一斉休校にせざるを得なくなりました。園児・児童・生徒のみなさんには自宅待機・学習をお願いし、教職員も交代で在宅勤務とし、情報収集しながら万全の対策を練ってやってきました。この間に全学でon line 授業の態勢を整えました。現在は中高の全教室にプロジェクター、スクリーンなどの設備が完備し、小学校にも全児童へタブレットを配布します。今後も情報教育環境を整え、しっかり力を入れていきたいと思います。この間のご家庭のご理解、ご協力を感謝しています。
学園施設としては、大きな幼稚園舎が完成しました。現在は広い園舎でお子さんたちが楽しくすごしています。一方、小学校には工事期間中、運動場がない状態でしたが、旧幼稚園舎及びグラウンド跡に広い運動場が完成しました。自動スプリンクラー、周囲には高いネットも完備し、大きな運動用具倉庫、放送設備もそろえました。まもなく鉄棒やバスケット、サッカーのゴールなども設置されます。二学期からは広々とした運動場で、全学の子どもたちに伸び伸びと使って欲しいと願っています。
短い夏休みでしたが、8月末に学園研修会を開催しました。今年度のテーマは「学園の将来計画」でした。一つは「学園の連携を強め、深めていくために「〔幼〕から〔小〕へ、〔小〕から〔中〕へ、〔中〕から〔高〕へ進みたくなるような、夢のある取り組みを考える」とし、もう一つは、「コロナ後の社会や教育の変化を、学園の教育にどのように取り入れ、生かしていくか」でした。それに先立ち、学園では〈全学的将来計画委員会〉を立ち上げ、学園の将来について話し合ってきました。二学期からはさらに小部会を設置し、具体的に進めていく予定です。特に「グローバル教育」と「情報教育」には力を入れていく予定です。
現代は想像もしないことが頻繁に起こります。毎年、大きな自然災害が起こります。人類はコロナのような未曾有の災いとも、共生していかねばならぬ時代になったのです。今後は after コロナ対策を講じていく所存です。コロナの終息に、また経済的な回復には数年を要するといわれていますが、情報を収集し、専門家のお知恵も借りながら、全学の教育に邁進していきたいと願っています。
中国に「人間万事塞翁が馬」という故事があります。昔、中国に塞翁という老人がいて、ある日、馬が逃げ出します。近所の人が気の毒に思って慰めると、老人は平然と「これが幸福のもとになるかもしれん」と答えます。しばらくすると逃げた馬が、名馬をたくさん引き連れて戻ってきました。近所の人から祝いの言葉をもらうと、塞翁は「これが禍のもとになるかもしれん」と答えます。すると、馬に乗っていた塞翁の息子が落馬して骨折し、足に障害が残ってしまいます。さぞや老人が嘆き悲しんでいるだろうと、近所の人が見舞いに行くと、塞翁は「これが幸福のもとになるかもしれん」と答えます。さて、その翌年、隣国との戦争が始まりました。国の若者は戦闘に駆り出され、ほとんど亡くなってしまいますが、息子は足の障害のため兵役を免れ、戦死せずに済みました。人生における幸・不幸は予測できないことをあらわす故事です。
私たちはマイナスの状態をプラスに切り替えながら生きていくべきです。失敗や落ち込みから立ち直っていく逞しさ、厳しい人生に対する底力といいますか、塞翁の生き方から学ぶべきことがあると思います。平和学園では、成功しても油断せず、失敗しても落ち込まず、未来に向けて進んでいきたいと願っています。卒業生の方々のご理解ご支援を、引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
学校法人平和学園 学園長 藤本 朝巳